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乳児期の唾液接触による学齢期のアレルギー発症リスクの抑制
こんにちは。歯科医師の川端です。
今回は論文のご紹介です。乳児期の唾液接触による学齢期のアレルギー発症リスクの抑制
これは和歌山県立医科大学皮膚科学講座(教授:神人正寿)博士研究員久保良美らの研究グループが、兵庫医科大学、獨協医科大学、高槻赤十字病院と共同研究を行ったものです。
唾液とアレルギーの研究
2013年に発表されたスウェーデンにおける出生コホート研究では、乳児期の親の唾液によるおしゃぶりの洗浄を介した親から子への口腔内細菌の移行が乳児の免疫系を刺激し、乳幼児期の効果的なアレルギー予防につながる可能性を示唆していました。
和歌山県立大学の研究
和歌山県立医科大学の発表によりますと、
乳児期の食器共有による唾液接触は、学齢期の湿疹(アトピー性皮膚炎)の発症リスクの低下と有意に関連していたことがわかりました。
また、親の唾液によるおしゃぶりの洗浄を介した唾液接触は、学齢期の湿疹(アトピー性皮膚炎)とアレルギー性鼻炎の発症リスクの低下と有意に関連していました。
さらに、学齢期のぜんそくについて、親の唾液によるおしゃぶりを介した唾液接触は、今回ははっきりとした有意差はでなかったものの、『発症リスク低下の可能性』について推測できました。アレルゲン耐性の発達
アレルゲン耐性の発達は、腸内細菌叢の多様性、乳幼児期の微生物による免疫刺激、出生時の母親からの微生物獲得など、いくつかの要因に依存すると考えられ、乳幼児期の微生物刺激が不十分であると、皮膚などのバリア組織が過敏になり、2型免疫反応(アレルギー性疾患)が亢進する可能性があります。
口腔内の環境
口腔は消化管に次いで豊富な微生物叢を有しており、動物及びヒトの研究から口腔内の微生物が腸に移動し、腸内細菌叢を変化させておそらくそのために免疫防御を変化させることが示唆されています。
乳幼児期の親の唾液によるおしゃぶりの洗浄を介した唾液の接触は、学齢期の湿疹(アトピー性皮膚炎)(オッズ比OR0.24;95%信頼区間Cl0.10-0.60)とアレルギー性鼻炎:OR0.32;95%Cl0.15-0.73)の発症リスクの低下と有意に関連し、同様の因子で調査後も有意な関連が示唆されました。(湿疹:OR0.35;95%Cl0.13-0.91,アレルギー性鼻炎:OR0.32;95%Cl0.14-0.72)。
親の唾液によるおしゃぶりの洗浄と学齢期のぜんそくについては、今回ははっきりとした有意差は見られませんでしたが、発症リスク低下の可能性が示唆されました。(調整後OR0.17;95%0.02-1.31)とのことです。虫歯予防・唾液感染のリスク
乳児期の大人から子供への唾液接触(食べ物をフーフーして冷ます行為や親御さんが口をつけたスプーンやお箸で子供に食べ物を与える、コップの共有など)は現在はう蝕予防の観点から推奨されていません。
しかしながら、今回の発表のように親の唾液がアレルギー予防になることが、様々な研究で証明されるようになりましたら並行してう蝕の疫学調査もされるのではないかな?と思っております。アレルギー疾患と歯科
インプラントセミナーでもアレルギー疾患がある方への投薬の注意や制限について学んでおりますので、アレルギー疾患の減少は歯科医療にも少なくない影響を与えると思います。
今後も歯科以外の研究にも目を配りながら、診療において現代の中で正しい説明ができるように心がけていきたいと思います。
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