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入れ歯とインプラントの違い〜選び方と費用比較
歯を失った時、どのような治療法を選ぶべきか悩まれる方は多いのではないでしょうか。特に「入れ歯」と「インプラント」は、失った歯の機能を回復するための代表的な選択肢です。 両者にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが自分に合っているのか判断するのは簡単ではありません。費用面や治療期間、メンテナンス方法など、考慮すべき点は多岐にわたります。 この記事では、歯科医師として30年以上の臨床経験を持つ私が、入れ歯とインプラントの違いを徹底解説します。それぞれの特徴や費用、適した患者さまのタイプまで、選択の判断材料となる情報をわかりやすくお伝えします。
入れ歯とインプラントの基本的な違い

まずは入れ歯とインプラントの基本的な違いについて解説します。治療方法や構造に大きな違いがあるため、しっかり理解しておきましょう。 入れ歯とインプラントは、失った歯の機能を回復するという目的は同じですが、アプローチ方法が根本的に異なります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
入れ歯の特徴
入れ歯は、失った歯の代わりに人工の歯を装着する取り外し可能な装置です。残っている歯の有無によって「総入れ歯」と「部分入れ歯」に分けられます。 総入れ歯は、すべての歯がない場合に使用します。歯茎全体を覆うように装着し、顎の粘膜に沿って吸着させることで固定します。 部分入れ歯は、一部の歯が残っている場合に使用します。「クラスプ」と呼ばれる金属のバネを残存歯に引っ掛けて固定する仕組みです。 入れ歯の大きな特徴は、手術が不要で比較的短期間で作製できることです。また、保険が適用される場合が多く、費用面でも負担が少ないという利点があります。
インプラントの特徴
インプラントは、歯を失った部分の顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。天然の歯に近い噛み心地と見た目を再現できるのが最大の特徴です。 インプラント治療は外科手術が必要で、インプラント体が顎の骨としっかり結合するまでに数ヶ月の期間を要します。また、自費診療となるため費用は高額になりますが、適切なケアを行えば10年以上使用できる耐久性があります。 インプラントは固定式であるため、入れ歯のようなズレや違和感が少なく、硬いものでも問題なく噛むことができます。また、顎の骨に刺激を与えることで骨の吸収を防ぐ効果もあります。
入れ歯とインプラントの違いを比較
入れ歯とインプラントの違いをより詳しく理解するために、いくつかの重要なポイントで比較してみましょう。
手術の有無
インプラント治療では、顎の骨にインプラントを埋め込むための外科手術が必要です。局所麻酔を使用するため痛みは少ないですが、手術に対する不安がある方もいらっしゃるでしょう。 一方、入れ歯治療では手術は不要です。型取りや調整など非侵襲的な処置のみで完了します。手術を避けたい方や全身疾患があり手術リスクが高い方には、入れ歯が適している場合が多いです。 また、インプラントは顎の骨の量や質が重要です。歯周病や骨粗しょう症などで顎骨が十分でない場合は、インプラント治療が難しいケースもあります。そのような場合は、骨造成という追加の手術が必要になることもあります。
保険適用の有無と費用
費用面では大きな違いがあります。インプラント治療は基本的に自費診療となり、1本あたり36万円〜40万円程度かかります。複数本のインプラントを入れる場合は、さらに高額になります。 一方、入れ歯は保険適用が可能で、保険診療の場合は3割負担で約2万円程度から作製できます。もちろん、より高品質な素材や快適性を求める場合は、自費診療の入れ歯(30万円程度)も選択できます。 ただし、長期的な視点で考えると、入れ歯は数年ごとに作り直しや調整が必要になる場合が多く、維持費がかかります。インプラントは初期費用は高いものの、適切なケアを行えば長期間使用できるため、トータルコストでは差が縮まることもあります。
治療期間の違い
入れ歯の治療期間は比較的短く、通常1〜2ヶ月程度で完成します。型取りから調整まで、数回の通院で済むことが多いです。 インプラント治療は、顎の骨とインプラントが結合するオッセオインテグレーションと呼ばれる過程が必要なため、治療完了までに3ヶ月〜1年ほどかかります。治療箇所や骨の状態によって期間は変わりますが、長期間の通院が必要になります。
メンテナンスとお手入れの違い
治療後のメンテナンスやお手入れ方法も、入れ歯とインプラントでは大きく異なります。
入れ歯のお手入れ
入れ歯は毎日取り外して専用のブラシと洗浄剤でのお手入れが必要です。就寝時には外して洗浄液に浸けておくことが推奨されます。 定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることも大切です。また、経年変化や顎の形状変化により合わなくなった場合は、調整や作り直しが必要になります。 入れ歯のお手入れを怠ると、口臭や歯肉炎の原因になることがあります。また、残存歯がある場合は、クラスプが掛かる歯のケアも重要です。
インプラントのお手入れ
インプラントは基本的に天然歯と同じようにブラッシングと歯間ブラシでのケアを行います。取り外す必要がないため、日常のお手入れは比較的簡単です。 ただし、インプラントと歯茎の境目は細菌が溜まりやすいため、歯科衛生士による丁寧なプロフェッショナルケアが必要です。そのため定期的な歯科検診も欠かせません。 インプラント周囲炎という炎症が起こると、最悪の場合インプラントがロストすることもあるため、適切なメンテナンスが長期的な成功の鍵となります。
入れ歯とインプラント、どちらが自分に合っている?
入れ歯とインプラント、どちらを選ぶべきか悩まれる方も多いでしょう。ここでは、それぞれに適した患者さまのタイプについて解説します。
入れ歯が向いている方
入れ歯は以下のような方に適しています。
- 費用を抑えたい方
- 手術を避けたい方
- 全身疾患があり、手術リスクが高い方
- 顎の骨の量が少ない方
- 短期間で治療を完了させたい方
- 将来的に状況が変わる可能性がある方
特に高齢の方や全身疾患をお持ちの方は、侵襲性の低い入れ歯治療が選ばれることが多いです。また、経済的な理由から入れ歯を選択される方も少なくありません。
インプラントが向いている方
インプラントは以下のような方に適しています。
- 天然歯に近い噛み心地や見た目を求める方
- 長期的な視点で考えている方
- 入れ歯の違和感や不快感が気になる方
- 硬いものもしっかり噛みたい方
- 残存歯への負担を避けたい方
- 顎の骨の吸収を防ぎたい方
比較的若い方や、食事や会話を重視する方には、インプラントがおすすめです。初期費用は高いものの、長期的な満足度は高い傾向にあります。
選択の決め手となるポイント
最終的な選択は、以下のポイントを総合的に考慮して決めることをおすすめします。
- 口腔内の状態(残存歯の数や骨の量)
- 全身の健康状態
- 年齢や今後のライフスタイル
- 費用面での負担能力
- 治療に求める機能性や審美性
- メンテナンスに割ける時間や手間
迷われた場合は、歯科医師との十分な相談が大切です。場合によっては、入れ歯とインプラントを組み合わせた治療法もあります。
入れ歯とインプラントの種類と費用比較
入れ歯もインプラントも、実はさまざまな種類があります。それぞれの特徴と費用について詳しく見ていきましょう。
入れ歯の種類と費用
入れ歯には大きく分けて以下の種類があります。
- 保険適用の入れ歯:レジン(プラスチック)製で、費用は3割負担で約2万円程度。耐久性や快適性はやや劣りますが、経済的な負担が少ないのが特徴です。
- 金属床義歯:金属のフレームを使用した入れ歯で、薄くて丈夫なのが特徴。自費診療で15万円〜30万円程度。
- ノンクラスプデンチャー:金属のバネを使わない審美性に優れた入れ歯。自費診療で10万円〜20万円程度。
- 磁性アタッチメント:残存歯に磁石を付け、入れ歯と固定する方法。自費診療で1本あたり5万円程度の追加費用。
入れ歯は初期費用は比較的安価ですが、調整や作り直しの費用も考慮する必要があります。一般的に3〜5年程度で作り直しが必要になることが多いです。
インプラントの種類と費用
インプラントにも様々な種類があります。 インプラント:インプラント体を埋入後、骨と結合してから上部構造を装着する一般的な方法。1本36万円〜40万円程度。
- オールオン4・オールオン6:4本または6本のインプラントで全顎の歯を支える方法。1顎あたり本数分の費用になります。
- インプラントオーバーデンチャー:インプラントと入れ歯を組み合わせた方法。2〜4本のインプラントで入れ歯を支えます。インプラント費用に加えて入れ歯の費用がかかります。
インプラントは初期費用は高額ですが、適切なケアを行えば10年以上、場合によっては20年以上使用できることもあります。長期的な視点で考えると、コストパフォーマンスに優れている場合もあります。
入れ歯とインプラントの最新技術
歯科医療の進歩は目覚ましく、入れ歯もインプラントも年々進化しています。最新の技術について紹介します。
入れ歯の最新技術
従来の入れ歯の問題点であった違和感や痛みを軽減する技術も進歩しており、快適に使用できる入れ歯が増えています。
インプラントの最新技術
インプラント治療では、CTスキャンとコンピュータシミュレーションを組み合わせたガイデッドサージェリーが普及しています。これにより、より安全で正確なインプラント埋入が可能になりました。 また、インプラント体表面の改良により、骨との結合期間の短縮や成功率の向上が実現しています。さらに、骨造成技術の進歩により、以前はインプラント治療が難しかった症例でも対応できるようになってきています。 当院でも高性能のデンタルCT撮影装置を導入し、インプラント治療の精度向上に努めています。
まとめ:入れ歯とインプラントの選び方
入れ歯とインプラント、それぞれの特徴や違いについて解説してきました。最後に、選択のポイントをまとめます。 入れ歯は、手術不要で短期間・低コストで治療できる点が大きなメリットです。一方で、装着感や噛む力、メンテナンスの手間などがデメリットとなります。 インプラントは、天然歯に近い機能性と審美性、長期的な安定性が魅力です。しかし、手術が必要で治療期間が長く、費用も高額になるというデメリットがあります。 どちらを選ぶかは、口腔内の状態や全身の健康状態、年齢、ライフスタイル、費用面など、様々な要素を総合的に考慮して決める必要があります。 最適な選択をするためには、歯科医師との十分な相談が不可欠です。当院では、患者さま一人ひとりの状況に合わせた最適な治療法をご提案しています。 歯を失ってお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたに合った治療法で、快適な口腔環境を取り戻すお手伝いをいたします。 詳しく、お気軽に当院までご相談ください。セカンドオピニオンもお待ちしています。
監修者情報
鈴木 聡(すずき さとし)先生
医療法人社団 緑幸会 登戸グリーン歯科・矯正歯科 理事長

略歴
広島大学歯学部卒業後、複数の歯科医院で研鑽を積み、
幅広い症例に対応。現在は、登戸・ 東京都世田谷区桜新町に分院を展開しており、 ゴムメタルワイヤーや取り外し式の矯正装置などを活用した「 できるだけ歯を抜かない非抜歯矯正」治療や「 歯を守るインプラント治療」を統括する医療法人社団 緑幸会の理事長として、地域の歯科医療に貢献している。 専門分野
矯正歯科・インプラント治療・審美歯科 特に、抜歯に頼らない「非抜歯矯正」や、目立ちにくい「マウスピース矯正(インビザライン)」に注力し、見た目と機能の両立を図る治療に力を入れている。
所属学会等
- 日本矯正歯科学会 会員
- 日本口腔インプラント学会 会員
監修者からのひとこと
患者さまの「見た目」と「噛める機能」の両立を大切にし、年齢やライフスタイルに合わせた矯正治療を心がけています。大人の方でも安心して始められる治療法をご提案いたします。
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