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根管治療と歯根破折
歯を失う理由No.3は歯の根っこが割れてしまう歯根破折です。
むし歯によって神経を抜く治療(根管治療)をしている歯は割れやすくなっています。
今回はなぜ歯の神経を抜く(失活歯)と割れやすくなるのかを書いていきます。歯の喪失
根管治療をすると歯の寿命が短くなる、水分が少なくなって枯れた木みたいになると聞いたことはないですか。
神経の生きている歯(生活歯)と比べて、神経を抜いている歯(失活歯)では寿命が短くなると言われています。
根管治療では歯の内側の歯髄を取り除くので、神経や血をとって中は潤っていたところから乾燥した状態になります。
このことから枯れ木に例えられやすいのですね。
ただ歯髄のあったスペースは乾燥するとしても、エナメル質や象牙質の水分量は大きく変化しないそうです。
湿潤の変化は強度関係ないそうです。
つまり実際は生活歯と失活歯の機械的特性に差はありません。
ものとしての強度に差がないにも関わらず割れやすさに差が出るのはなぜでしょうか。失活歯が割れる理由
失活歯は生活歯に比べて感覚の閾値が低い
反対側同名歯で根治した歯と生活歯で違和感、痛みを感じるまで負荷をかける実験がありました。
例えば右上の4番目の失活歯と左上の4番目の生活歯で比べたものですね。
この実験結果によると失活歯は生活歯よりも閾値が2倍低かったそうです。
つまり硬いものを噛んで生じる痛み、違和感を失活歯の方が感じにくい、ということが言えます。
噛んでいることを感じにくい=噛む力をコントロールしにくい。
失活歯に過剰な力がかかりやすいということですね。残存歯質が少ない
多くの場合神経を抜くことが必要になるのは、歯髄にまで到達するほど大きなむし歯があるからです。
また神経を抜く治療をする時は、根管という根の中の細い管まで洗浄をする必要があります。
根管治療では根管に器具や洗浄剤が入るようにするために、むし歯ではない歯の一部を削る必要性が出ます(便宜的切削)。
このような理由で歯質の量が減ると歯が薄くなり、折れやすくなります。
根管治療が終わった後は歯冠修復といって被せ物などで歯の形を整える必要があります。
抜去歯を使った失活歯の形成の実験で歯の剛性を見たものがあります。
根管治療を行った後の歯の剛性は5%減少とさらにその後歯の形成を行った歯の剛性では64%減少。
逆の順番で歯冠形成を行った歯の剛性は63%減少、その後その歯を根管治療すると剛性は5%減少。
ここから歯質の喪失が根管治療を行うことよりも歯を弱くすることがわかりますね。
歯科医師としてもできるだけ歯の神経はとりたくありませんが、かといってむし歯をそのままにはできません。
患者様と一緒に状態を確認し、方針を考えていくよう心がけています。
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